ハロー、愛しのインスタントヒーロー



大きな黒い目は気まずそうに下を向いていた。瞼もその周りも赤くなっていて、泣き腫らしたのが分かる。
何より、奈々ちゃんの雰囲気がいつもと全然違った。ものすごく落ち込んでいるみたいだ。


「どうしたの? やっぱり、げんきじゃないよ」

「うん……」


奈々ちゃんの手が震えている。寒いのかな、と思って、中に入ってドアを閉めた。それでもずっと震えている。

と、奈々ちゃんが急にぽろぽろと泣き始めてしまった。
驚いて、どうしたらいいか分からなくて、僕はとにかく慌てた。


「な、ななちゃん……どっかいたい? けがしたの? えっと、えーっと」


何を聞いても首を横に振られるだけだったから、奈々ちゃんが泣き止むまでそばにいることしかできなかった。

それからしばらく、僕は奈々ちゃんの家に行って、ただ泣いている奈々ちゃんの隣で黙って待つことが続いた。何かした方がいいのかな、と最初は迷ったけれど、奈々ちゃんは僕がここにいるだけでいいみたい。

少しずつ奈々ちゃんの気持ちが落ち着いてきたら、公園に誘ってみた。学校にもまた来られるようになって、その頃には桜が咲いていた。


「さおりちゃん、しょうがやき、作って!」