ハロー、愛しのインスタントヒーロー




「ななちゃん。僕、引っ越さなきゃいけない」


小学四年生の冬、絢斗は突然そう切り出した。
その頃には彼の家に上がって遊んだり、そのまま夕ご飯を食べさせてもらったりすることが多く、彼のお母さんにもかなりお世話になっていた。私の母がまともに家に帰って来ないことを知って、色々と気を遣ってくれていたのだろう。


「何で?」

「お父さんの仕事するところ、遠くになるんだって。だから、引っ越し、しないと」


平然と言ってのける彼に感情が追いつかない。だって、あまりにも唐突だ。
どうして絢斗はそんなに冷静でいられるのか、さっぱり分からなかった。


「引っ越しって……いつ?」

「来月末だよ」

「あと一か月しかないよ。何でもっと早く言わなかったの?」

「決まったのが急だったから……」


来月には絢斗がこの町からいなくなる。それは既に決定事項で、私にはどうすることもできない。

悲しかった。最初に「ずっと一緒にいよう」と言ったのは私だったけれど、ずっと一緒にいて欲しかったのは、私の方だ。
これからも当たり前に絢斗が隣にいると思っていた。小学校、中学校と卒業して、そのままこの町で暮らしていくのだと思っていた。

こんなに悲しいのは、寂しいのは、私だけ? 絢斗はどうして普通でいられるの。


「何で? 行かないでよ。引っ越しなんてしないでよ!」