ハロー、愛しのインスタントヒーロー



一緒にいたい。一緒になんていられない。
絢斗の中に芽吹いたのは、いつか枯れてしまう淡く綺麗な蕾だ。綺麗なものには賞味期限がある。永遠に美しいままなのはフィクションの中だけ。


「あ」


唐突に何かを思いついたように声を上げ、絢斗がこちらを見やる。そのまま両腕を広げると、歯を見せて笑った。


「ハグ! 今日の分!」


無垢な少年のように促してくる彼に、昨日の力強い腕を思い出して勝手に気まずくなる。

そもそも一日三分だなんてルールを作ったのは絢斗で、別にそれに従う必要はない。
絢斗は気付いていないかもしれないけれど、慣れるまでハグをしようというのはつまり、私が絢斗のことを好きになるまで続けようということで、その時点で恋というものの傲慢さに巣食われているのだ。

私は変わりたくはない。絢斗との時間に、空間に、変化をつけたくはない。絢斗にだって変わって欲しくはない。
そうすれば私たちはもしかしたら、まだ一緒にいられるかもしれない。

好きになるから怖いのだ。相手が好きでいてくれなくなったらどうしよう、そんな終わりを気にして怯えてしまう。


「……うん。三分だけ、ね」