ハロー、愛しのインスタントヒーロー




ふと目を開ければ朝だった。疲れからか、昨夜はすぐに寝入ってしまったような気がする。

隣にはまだすやすやと眠っている絢斗がいて、呼吸の度に鼻が膨らむ。
気持ちよさそうに寝やがって、とその鼻先をつまめば、苦しくなったのか彼はようやく顔をしかめた。


「んがっ」

「起きた?」


眉根に寄った皴が解かれて、瞬き三回。焦点が私に定まったらしく、絢斗は「おはよう」とだらしなく頬を緩めた。


「いま何時?」

「六時」

「そっかあ」


あくび交じりに返事をした彼が、渋々といった様子で起き上がる。


「家帰って準備しなきゃ……」


絢斗の表情には珍しく憂鬱気な色が浮かんでいて、そこで私も一気に現実へ引き戻された。

いま絢斗を帰したら、今後もう容易に会うことはできなくなる気がする。私が沙織ちゃんに焚きつけたのだから、当然と言えば当然だ。ここで引き留めても、もって数日だろう。


『私は絢斗と離れるつもりはありません。絢斗自身も、それを望んでいます』


あんな啖呵を切ったのに。本当は、私も絢斗も、そばにい続けることを望んでいるのに。


『今ね、奈々ちゃんを守りたいって、思ったよ』