べえ、と舌を出して涙目の絢斗に、意図せず頬が緩んでしまう。緩んで、笑えてきて、そうしたら心のどこかにあったリミッターが外れてしまった。
「な、奈々ちゃん……?」
絢斗がびっくりしたように目を見開く。その顔すら滲んで歪んで、すぐにぼやけていく。
焦った。不意打ちで流れ始めた涙はとどまるところを知らない。拭っても拭っても溢れてくる。
喉の奥が締まって変な声が出る。誤魔化すように箸を握って、必死に麺をすする。むせ返りそうになっても嗚咽を胃に戻し込む。
絢斗は何度か声を掛けてきたけれど、それが無駄だと分かると、自分も食事に集中していた。
「奈々ちゃん」
「ごちそうさま」
「奈々ちゃん!」
立ち上がろうとした私の腕を掴んで、絢斗が語気を強める。
「だめ、座って。ちゃんと僕の顔見てよ」
「……痛いから離して」
「絶対やだ!」
駄々をこねるのとは違う。明確な意思を感じて彼の方を見やると、真剣な瞳が私を貫いていた。自分の要求を通すまで退かない、一本芯の通った男の人の目。
そんな顔をするの。わがままじゃなくてエゴみたいな「やだ」を、初めて聞いた。
「隠さないでよ。辛いのも苦しいのも、僕の前で我慢しないでよ。何のために二人でいるの……?」



