ハロー、愛しのインスタントヒーロー




カップラーメンは、お湯を入れてから五分待ちのものしかうちに在庫がなかった。

風邪引いちゃうね、とぎこちなく私から腕を離した絢斗は、ドライヤーを手に取った。抱擁を解かれた私も、大人しく髪を乾かしてもらった。


「奈々ちゃん、いま何分?」

「三分経った」


あと二分が待ち遠しい。三分に慣れてしまった弊害だ。
やらなければならないことも考えることもたくさんあるのに、湯気のいい匂いを嗅いだら、お腹空いた、しか頭に浮かばなくなる。

一か月前、絢斗がうちに来てカップラーメンを食べた時のことをふと思い出した。


「……絢斗、前に生姜焼き持ってきたよね」


結局あの日は絢斗を帰した後、一人で生姜焼きを食べた。沙織ちゃんのご飯は小学生の頃に何度か食べたことがあったから、ほんの少し懐かしくて、なぜか苦しくなった。


「うん。また持ってくる?」

「そうじゃなくて……」


次の言葉を迷っていると、絢斗が不思議そうに首を傾げる。


「沙織ちゃんは私のこと嫌いなのに、どうしてわざわざ持って行けって言ったのかなって」


絢斗から沙織ちゃんのことを聞いて、沙織ちゃんと実際に会って、ますます分からなくなった。何か策があったんだろうか。考えても彼女の意図を捕まえられない。


「沙織ちゃんは、奈々ちゃんのこと嫌いなんかじゃないよ」