ハロー、愛しのインスタントヒーロー



素直にドライヤーを受け渡し、彼の目の前に腰を下ろした。

私が落ち込んでいる時、泣いている時、上手な慰め方を知らなくて困っていた絢斗は、当時何でも聞いてきた。
あれはどう? こうしたい? それの方がいい?
その問いに全て「一緒にいてくれればいい」としか私が答えなかったから、更に困らせてしまったと思う。

でも絢斗は文字通り一緒にいてくれたし、極端に甘やかしてもくれた。彼曰く、いつもは私にしてもらってばっかりだから、私がダメな時は自分が何かしなきゃと思うらしい。


「奈々ちゃん、髪真っ直ぐでいいなあ。僕、毎日ぼさぼさで直すの大変なんだよ」

「動きがあっていいじゃん」

「あ!」

「なに?」

「沙織ちゃんに連絡してない……」


つけておいたテレビから豪快な笑い声が上がる。それでも私たちは笑わないし、笑えなかった。


「したよ」

「え?」

「さっき、私がしておいた。絢斗はこっちに泊まりますって」


彼の希望通り、嘘は何一つついていない。絢斗の気持ちも、私の気持ちも、間違っていないし正直に伝えたつもりだ。


「……ごめん。もしかしたら、明日からもう一緒にいられなくなるかもしれない」