ハロー、愛しのインスタントヒーロー



受け取った絢斗が訝しげに首を傾げる。


「これ、奈々ちゃんの?」

「違うよ。サイズからして絢斗は私の服なんて着れないでしょ」

「じゃあ誰の服?」

「誰って……」


そんなことをどうしていちいち言わなければならないのか。というか、名前も顔もあまり覚えていない。


「多分、クラスの人。前に来たとき忘れてったやつ」

「男の子?」

「うん」

「ふうん……」


せっかく答えたのに、絢斗はますます不服そうに眉根を寄せた。そんな表情は珍しい。怒っている、とも言い難いような、どちらかと言えば、拗ねている子供のような。


「……なんかそれ、やだ」


む、と唇の端を落として、あからさまに不機嫌な口調。若干低まったその声色に戸惑う。


「や、やだって……これしかないんだけど」

「着るよ。着るけど! でも、なんか、やっぱりやだ。奈々ちゃんのばかっ」

「はあ?」


言い返そうと顔を上げた瞬間、絢斗を直視してしまった。
広くてしっかりとした胸板、細い体躯に浮き出た骨のラインまで。肌色に点々と滴る水が妙な雰囲気を演出している。


「……い、いいから早く着て!」