ハロー、愛しのインスタントヒーロー



遮蔽物なしに直接耳に届いた声は、より明るくてよりうるさい。気配に圧されて思わず仰け反る。

私をゆうに超した背丈で、絢斗がにっこりと口角を上げた。広くなった肩幅と、袖口から覗く骨ばった手の甲が、時の流れを嫌でも感じさせる。
それでも、柔らかそうな猫っ毛は相変わらずだし、大きくて垂れ下がった目は記憶の通りだった。

ただの優しくて人当たりのよさそうな男子高校生。彼に対して抱ける印象は、それくらいのものだ。


「……何?」


私の顔をじろじろと見てくる彼に、遠慮なく刺々しい視線をぶつける。


「奈々ちゃん、美人さんになったなあと思って」

「は?」

「いや、もともと可愛かったけど! あんまり綺麗だったから、びっくりしちゃった」


へへ、と鼻の下を伸ばした絢斗が、なぜか照れたように頬を赤らめた。
反射的に身を引き、私は「気持ち悪い」と吐き捨てる。


「ひどい! 久しぶりに会えたのにそれはないよ!」

「それは、」


そっちのせいだ。勝手にいなくなって、勝手に帰ってきたんだ。ひどいのは全部そっちで、私は何も悪くない。


「……うん、そうだね。僕が悪かったんだ。奈々ちゃんを、一人にしたから」