思いのほか直接的な言い回しに、どきりと心臓が跳ねた。
絢斗の表情は困惑から緊張に変わっていて、それがこっちにも伝染する。


「……それ、沙織ちゃんにも言われたよ。奈々ちゃんに会いに行きたいって言ったら、『私のこと見捨てるの?』って」


声を失った。彼の目に宿る、絶望に近い小さな闇を見つけてしまう。


「沙織ちゃん、僕のことを好きだって言ってた。それを言われる時ね、ちょっとだけ怖いんだ。好きって言われたら嬉しいはずなのに、何でだろうね」


戦っている。私だけじゃない。絢斗もまた、得体のしれない恐怖や暗闇に飲み込まれそうになりながら、必死に抗っている。


「だから僕、決めてたんだよ。奈々ちゃんに会いたいって思った時から、この町に帰ってきた時から、ずっと。何かを選ばなきゃいけないなら、どっちかを捨てなきゃいけないなら、僕は奈々ちゃん以外、何もいらないって」

「……絢斗、」

「一つしか選べないなら、その片方が沙織ちゃんだったとしても、僕は奈々ちゃんを選ぶ。七年かかったけど、やっとそう思えた」


七年。七年、だ。
私は絢斗のことを心の中でずっと待ち続けていた。寂しさを紛らわせようと、痛みを忘れようともがきながら、それでもずっと彼を待ち望んでいた。

私の感じていた七年は長かったけれど、絢斗の感じていた七年は、どれほど先が見えず長かったのだろう。


「そっか……」