結局、絢斗が駅に着くまで三分どころか二十分かかった。これではブラジルの場合、一体何時間かかるのか。若干気が遠くなりそうだ。

それから二人でまた電車に乗ったけれど、絢斗のスマホには頻繁に沙織ちゃんからの電話がかかってきているようだった。


「……何にも言わずに来たの?」

「ううん。奈々ちゃんのところ行くって、ちゃんと言ったよ」


原因それだよ、多分。内心つっこみながら、思わずこめかみを押さえる。

昨日は表面上穏やかに接していた彼女でも、最後は私への嫉妬心を隠せなくなっていた。
この一年――つまり、次の春が訪れるまでという猶予は与えられたにせよ、いつ「すぐにでも絢斗から離れろ」と言われるか分かったもんじゃない。

そうなる前に、きちんと話さなければならないのだ。絢斗とも。


「絢斗。さっき、私しか大切にできないって、言ったよね」


改札を抜けて夜道を歩く。心配したあまり家の近くを沙織ちゃんが見て回っているのでは、と思ったけれど、周囲にはそれらしき人影はなかった。


「うん。奈々ちゃんのこと、好きだよ」

「それって、どういう『好き』?」