ハロー、愛しのインスタントヒーロー



電話が通じてから一言も話していない私を訝しんでか、絢斗が呼びかけてくる。


「奈々ちゃん。泣いてるの……?」


す、と小さく鼻をすすってしまった。街のざわめきに消えてしまいそうなくらい小さな音だったのに、絢斗は何の迷いもなく「泣いている」と思ったらしい。

遠い電波越しで私の名前を呼んでいる。私のことを何よりも大切にしようとしている。


『先に裏切ったのはあんただよ。許さないから。私を置いてって、一人にして、絶対許さないから!』


裏切られた、なんて、本当は思っていなかった。絢斗がそんなことをできるわけがないのだ。
何年会えなくても、環境が私たちを引き離しても、結局こうして巡り合ってしまった。今更どうやって絢斗を手放せばいいのだろう。


「絢斗」

「うん?」


絢斗。ねえ絢斗。どうしたらいい? 私はどうしたら、絢斗とずっと一緒にいられる?


「会いたい」


声を聞いたら安心してしまう。顔を見たら多分もっと泣いてしまう。でも、それでもいい。


「会いたいよ。もう歩きたくない……絢斗、迎えに来て」

「奈々ちゃん、今どこにいるの?」

「言ったら来てくれる?」