ハロー、愛しのインスタントヒーロー



脳内ではっきりと再生された言葉に、胸が震えた。
指が勝手にその名前を探している。画面が明るくて目はちかちかする。

フリック入力が遅い絢斗は、メッセージのやり取りがあまり得意ではないようだった。だから彼が私の家に来た時、電話番号を教えて欲しいと言われた。
今まで話せなかった分、いつでも話したいから。無邪気な笑顔でそう告げて。


「……奈々ちゃん?」


電話をかけて僅か三秒。コール音はすぐに途切れる。


「奈々ちゃんだよね? 昨日は急に帰っちゃったけど、どうしたの? あのあと電話しようと思ったんだけど――あ、ちょっと待ってね」


口を挟む間もなく一方的に喋り倒し、彼は唐突に黙り込んだ。がさごそと物音が続き、程なくして再び話し出す。


「今ね、コンビニ行ってくるって嘘ついて外に出た。……昨日も奈々ちゃんに電話しようとしたんだけど、家にいたら、何となく気まずくて」


それはきっと、沙織ちゃんの目を気にして、という意味なのだろう。
鈍感な絢斗はどこまで理解しているのだろうか。さすがに親が自分に対して恋情を抱いているとは、想像もしないだろうけれど。


「話せて良かったあ。……奈々ちゃん?」