怒声と共に手を振り払われた。その勢いで半歩あとずさった私に、父は目尻をつり上げる。
「俺が稼いだ金をよその男に使う女だぞ! こっちが苦労して働いたっていうのに、それをどうして浮気相手なんかに……」
「浮気……?」
不穏な響きに胸がざわつく。――母が、浮気をしていた?
「中学も高校も、誰のおかげで通えたと思ってる! もうこれで終わりにしてくれ!」
「お父さん……」
母が泣いているのを見た。ぼろぼろになって帰ってくるのを見て、私のために一生懸命働いてくれているのだと思った。
父が悪い。私たちを勝手に置いていって見捨てた父が全部悪い。今までそう思っていたから、何の遠慮もなく彼を責めることができた。
「悪いな。もうお前を娘だとは思いたくないんだ。……成長していく度にあいつに似ていく。やっぱり、顔もそっくりになるもんだ」
手からはとっくに力が抜けていた。未だに縋ろうという気にはなれなかった。
恐ろしくて、得体のしれないものに怯えて、ただ奥歯が震えている。
「あなた、どうしたの? 大きな声出して……」



