ハロー、愛しのインスタントヒーロー




その日、学校が終わって、最寄り駅から電車に乗って街へ出た。
特に意味はない。このまま帰り道を辿って絢斗に出くわしたくなかったし、母とも何となく顔を合わせづらいと思ったからだ。

全てにおいて中途半端なまま、私は身動きを取れずにいる。

駅前の広場で待ち合わせをしている同年代の女の子たち。タピオカだとかチーズハットグだとか、そんな単語が時折聞こえてくる。あまりにも楽しそうに笑っているから、なぜだかため息をつきたくなってしまった。

広場の隅っこでスマホの画面を睨み、もう何分経ったのだろう。
勝手に登録したばかりの父の番号が表示されている。発信ボタンをタップしようとしては指先が震えて、何回も躊躇してしまう。

何のためにこの番号を手に入れたの。どうして私がこんなに息苦しい思いをしなくちゃいけないの。――私を置いていったのは、向こうなのに。

恐怖心を無理やり怒りで押し殺し、指先に力を込める。
画面が切り替わり、コール音が鳴り始めた。

規則正しいその機械音が途切れる度に、心拍数が上がっていく。
出ないかもしれない。もう出てくれなくていい。緊張で涙が溢れそうだ。


「はい。横井です」