ハロー、愛しのインスタントヒーロー



面倒くさがってロックをかけていないおかげで、スワイプしただけでホーム画面がお目見えする。我が母ながら、そのズボラさにため息をついた。

発信履歴を確認し、一番上の携帯番号を自分のスマホに登録する。


「……ねっむ」


あくびを零しつつ作業を終え、母がシャワーから帰還する前にもう一度布団へ潜った。

多分、母は私を大学に行かせたいのだと思う。彼女の言葉を借りるなら、学歴とかそういう類いのメリットのために。
でも、私だって何も考えず働くと決めたわけじゃない。夢はない分、現実をきちんと見つめているつもりだ。

どれだけ母が稼げたとしても、大学へ行くには相当な金額が必要になる。決して無理な金額ではないだろう。いまどき奨学金も借りられるし、どうにかはなるのだ。
問題は、そこまでして大学へ通う意味があるのかということ。今から勉強をして仮に合格して、私は何のためにお金と時間を費やすのか。

それに、さっきの母の言い方から察するに、父からお金を借りようとしていた。そんなお金で行く大学なんて、ますます御免だ。

父にはあの日以来会っていない。いつか、一度でいいから会いたいと思っていた。
このチャンスを逃すわけにはいかない。