私と沙織ちゃん、どっちが大事なの。
そんな馬鹿げた質問を絢斗に投げかけるわけにはいかない。どっちも大切で、どっちも手放せない。彼はそう答えるに決まっている。
でもね、絢斗。どっちも大切にするなんて、そんなことできないんだよ。もうそんなところは通り過ぎてしまった。
絢斗が沙織ちゃんと離れない限り、私と絢斗が一緒にいることはできない。でも沙織ちゃんは絢斗のお母さんだから、一生離れることなんてできない。
家族という繋がりはそれほど強固なものだし、強固であって欲しいと思っている。
『うん、そうする。ずっと一緒にいるよ。ななちゃん』
無理だよ。無理だったよ、絢斗。
ずっと一緒、なんて、まやかしでしかないのかもしれない。
家族じゃなきゃ、恋人じゃなきゃいけないんだろうか。ただ隣にいて欲しいとか、一緒にいると安心するとか、それだけじゃだめなのかな。
カテゴリーに分けて、ここからこっちは好き、あっちは嫌い、なんて、簡単に割り切れればもっと楽だった。
でも、私と絢斗は家族じゃない。いつか終わりが来てしまうような、自ら終わりを約束するような、恋人という間柄にもなる気はない。
それなら私は、やっぱり絢斗という「大切」を、手放すしかないんだろうか。



