ハロー、愛しのインスタントヒーロー



母が強引にでも私を高校へ行かせた理由を、本当は知っている。


『学歴は持っておきな。……私みたいになりたくなかったら』


打たれた頬を押さえて床にうずくまっていた時、僅かな声量だけれど聞き逃さなかった。聞かせるために言ったわけではないのかもしれない。それでも。

きつい口調で怒鳴られて殴られても、私はあの時、なぜだか一番嬉しかった。嬉しくて泣きそうになった。
母が思わず零した独り言を隠し通すように、私もその気持ちは絶対言ってやらない。

自分にとって何のメリットもないのに私を進学させた。それが母の最大の温情だったし、私に与えられた最後の猶予だった。
この二年、散々好き勝手させてもらったけれど、それもあと一年もしないうちに終わる。

私は結局、やりたいことなんて見つけられなかった。将来の夢とか、未来とか、目標とか、不確定なもののために自分の身を削って努力する才能はない。
だから、これでいい。働いて、お金を稼いで、もしかしたら誰かと結婚して、子供を産む。果たして自分にそれができるかは分からないけれど、私が望むのは、普通の幸せであり、それが一番不確実で難しいものかもしれないけれど。