ハロー、愛しのインスタントヒーロー



案の定、と言って然るべき質問だった。
母とまともに話すのは久しぶりだ。上手く言葉を繰り出せないでいると、更に問いを重ねられる。


「大学は?」

「……行かないよ」


その口から大学という単語を聞くことになるとは思わなかった。
私の頭の中に進学の選択肢がなかったのと同様、母の脳内も就職一択だと疑っていなかったからだ。


「行かない、ね」


吸う気が失せたらしい。ライターをしまって母が目を伏せる。


「行きたくないとは言わないんだ」


彼女が指しているのは恐らく、私が中学生の時のことだろう。
ちょうど三年前、やはり進路のこと。高校には行きたくない、と主張した私の頬を、母は打った。


『あんたみたいな小娘が簡単に金稼げるほどこの世界は優しくないんだよ。いいから高校には行きな。行かないならここから追い出す』


あの時、行きたくない、と言ったのは半分嘘だった。行きたくないというよりも、行かない方がいい、と思っていた。
早く仕事に就いてお金を稼いで、自立したかったから。――その方が、母に負担をかけないと思ったから。


「……別に、行きたいとも思わないし」