OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


「……魚見る以外、やることあるのか、水族館」

 そう駿佑に言われた雁夜は、ああ、ごめんごめん、と笑ってみせた。

「なんていうか。
 駿佑が女の子とデートなんて不思議な感じだから。

 帰りとかちゃんと送ってった?」

「ああ。
 あ、そういえば、水族館からの帰り、いきなり前の車が曲がろうとしたんで、急ブレーキかけたら。

 シラユキが後部座席からフロントガラスに飛んできて、俺の膝の上に落ちたんだ。

 お前も気をつけろよ」

 ……なにをどう気をつけたら。

 っていうか、どんな運転だ……と思いながら、

「白雪さん、大丈夫?」
と訊いてみる。

「白雪?
 いや、大丈夫もなにも普通に元気だが。

 さっきも大金の置き場にまだ迷ってるとか、くだらないこと言ってたな」

「え、大金?」

 宝くじだよ、と呆れたように、だが、ちょっと楽しそうに駿佑は言った。

 そういう顔初めて見るな~と思いながら、ぼーっと見ていると、

「おっと時間だ」
と駿佑は腕時計を見て行きかけ、また戻ってくる。