OL 万千湖さんのささやかなる野望

「じゃあ」
と万千湖はカチョウとともにとっぷり日の暮れたビル街の細い道を歩いていこうとする。

「待て」
と駿佑は呼び止めた。

「やっぱり暗いから送ってく。
 遠回りだが、我慢しろ」

「え、でも、申し訳ないです」
と言う万千湖を半ば強引に車に乗せる。

 自分はそんなに気の利く男ではないが。
 こいつ一人で夜道を歩かせるのは嫌だな、となんとなく思ったのだ。