OL 万千湖さんのささやかなる野望

 しょうもない話をしながら駐車場への道を歩く。

「そういえば、お前、普段、車に乗らないのに、なんで、ここの駐車場が狭いって知ってたんだ?」

「いや、(じゅん)くんが乗せてきてくれたことがあって」

 誰だ、純くんって……。

「そういえば、純くんがここに来たとき、『うちの親方がさ~』って話してて。
 純くん、誰に弟子入りしてるんだろうな、と思ってたんですけど。

 純くん普通の商社勤めなんで、うちの親がさ~、の聞き違いだったんじゃないかなと思うんですよね~」

 万千湖はそこで少し考え、
「……商社に親方って、いますかね?」
と訊いてきた。

「……いないだろう」
「そうですか。
 いや~、世の中知らないことも多いので、実はいるのかなと思って」

「いないだろう」
「そうですか」

 いや、そんなことより、純くんだ。

 そのまま次の話に移ってしまいそうだったので、迷いながらも訊いてみた。

「純くんって誰だ?」

「私の従兄弟です。
 親戚みんなで引っ越し手伝ってくれたとき。
 近くに古書店があるって言ったら行ってみたいって言ったんで、一緒に来たんですよ」

 そう言う万千湖に、ホッとしながら、
「じゃあ、その親方、お前のおじさんじゃないか」
と言うと、そうなりますよね~と万千湖は笑う。

 ほんとうにしょうもない話だったな、と思ったとき、裏の駐車場に着いていた。