OL 万千湖さんのささやかなる野望

 車に戻ろうとしたが、万千湖は足を止める。

「どうした?」
と振り向くと、

「いえ、もう解散かなと」
と言う。

 何故、解散したがる、と思ったが、確かにもう遅い時間だ。

「送っていこう」
と言ったが、

「いえいえ。
 すぐそこなんで」
と万千湖はビルの向こうに見えるマンションを指差した。

 確かに車で回るより、歩いて帰った方が早そうだ。

「じゃあ、歩いて送ろう」

「大丈夫ですよ。
 それに駐車場狭いから、車置いとかない方がいいですよ」
と万千湖は笑う。

 まあ、それは確かに、と思ったとき、万千湖が、あっ、と声を上げた。

「カチョウッ」
「なんだ?」

「いえ、あっちの紙袋に入ってる方のカチョウです」

「……俺が紙袋にもうひとり入ってるみたいだからやめろ」

 そう言うと、万千湖は笑った。