万千湖が言うところの売れない書生さんが現れそうな古書店は、確かに時が止まっているかのような雰囲気があった。
大学のとき資料探しに通った古書店に似ている、と思った駿佑は店内を探索してみた。
万千湖は入り口のところで止まって、なにやら熱心に見ている。
二階もあるらしく、階段の端には、これ捨てるのだろうかという感じに麻紐で縛られた漫画の塊が、どん、どん、どん、と置かれている。
だが、値札がついているので売り物なのだろう。
子どもの頃読んでいた漫画を見つけ、つい、その縛られていた漫画をひとつ、買ってしまった。
……堪能した、と思って入り口に戻ると、万千湖はまだ熱心に古い本を読んでいた。
「それ買うのか?
買ってやろうか?」
そう声をかけると、初めて自分が側にいることに気づいたようで、
「あっ、大丈夫ですっ。
買ってきますっ」
と急いでレジに行き、なにやら分厚い本を買っていた。



