OL 万千湖さんのささやかなる野望

「そういえば、デートいつにします?」
「いつにするかな」

 イルカのプールを囲む観客席は、ちょうどよい日差しとプール側から吹きつけてくる冷たい風でいい感じだ。

 ……ちょっぴり生臭いが。

 ショーがそろそろはじまりそうだ。

 準備をしているスタッフさんたちを見ながら、万千湖は呟く。

「何処に行きましょうかね~。
 デートって、普通、何処行くんですかね?」

「レストランとか、動物園とか、映画館とか……水族館とか」

 水族館……来てるな、と二人は思った。

 プール近くの席を陣取っている子どもたちは水飛沫を浴びる気満々で、きゃっきゃしている。

 それを微笑ましく眺めながら、万千湖は言った。

「イルカ終わったら、何処見ます?

 あ、でもそういえば、私、今日、うっかり大金を持ってきてしまったので。
 ウロウロするの、ちょっと怖いんですよね」

「大金?」

 万千湖はそこで周囲を窺い、
「これです」
と声をひそめて、カバンの中を見せた。