OL 万千湖さんのささやかなる野望

「このお茶が出るやつ」
「お湯だろ」

 いや、まあ、そうなんですけど。
 此処ではお茶しか作らないので、つい、そう言ってしまいますよね……。

「なにに使うんだ?」
と問われ、万千湖は悩む。

 そういえば、漠然とただ、欲しいなと思っていたけど。
 自分はなにに使うつもりだったんだろうな、と。

「……カップ麺つくるとか」

 黙って、駿佑は自分を見ている。

「……インスタントコーヒーを淹れるとか」

 黙って、駿佑は自分を見ている。

 まだなにか言わねばならないかと、万千湖は、また口を開いた。

「……カップ焼きそばを作るとか」

「いや、お茶を入れろよ」
 っていうか、カップ麺とカップ焼きそばは、違うのかと言われた。

 そのあと、万千湖はお湯の蛇口がコタツの前にあったら、なにに使うか、という話で駿佑と盛り上がりながら、サビ抜きの海老を食べた。

「なにに使うかは意外と思いつかないですけど。
 コタツにお湯の蛇口って、夢が広がりますよね。

 いろんな果物やお菓子がなる木が家の中にあるみたいで」

 わかってもらえるのかどうかわからない例えをしながら、笑って次の皿をとろうとした万千湖だったが。

「待て」
と駿佑に腕をつかんで止められる。