OL 万千湖さんのささやかなる野望

「私の方こそ、いつ、課長に捨てられるかなと思って、ビクビクしてるんですけど」

「なんでビクビクする?
 こんなに俺はお前に執着してるのに?」
と言う駿佑に、それですよ、と万千湖は言った。

「この間、課長、読んでたじゃないですか。
 そこに寝転がって。

 『執着を捨てる』っていう本。

 ……捨てられる。

 そう思いました」

「いや、ただの会社の図書室で借りてきた片付けの本だろ……。
 まあ、俺が執着してるのはお前だけだが」
と駿佑は、大真面目な顔で万千湖を見つめ言ってくる。

 いや……やめてください、と万千湖は赤くなりながら、
「こ、紅茶です」
と駿佑の前に置いた。

 駿佑はそれを見ながら、
「そういえば、夫婦仲がよくなるハーブティーはどうした?」
と訊いてくる。

 ……覚えてたんですか、ハーブの話、と思ったとき、駿佑は少し迷って、紅茶を手に、万千湖の隣に座り変えてきた。

 いつも向かいにしか座らないのに。