OL 万千湖さんのささやかなる野望

「もう寝てたら、起こしちゃ悪いな、と思って。
 そっとキャンドルのやさしい灯りでお前の寝顔を照らそうかと。

 以前、強烈な登山用ヘッドライトを額につけて訪ねたら、お前、悲鳴を上げたからな」

「……あれは夢ではなかったのですね」

 歯医者さんが夜中にやってきたのかと思いました……と言って、
「何故、歯医者さんがわざわざ夜中に治療しに来てくれる」
ともっともなことを言われてしまった。

「歯医者のコスプレでヘッドライトだったわけじゃなくて。
 手が自由に使えるからヘッドライトだっただけだ」

「手が自由だとなにかいいことがあるんですか?」

 真顔で訊いた万千湖に、駿佑は照れ、ちょっと迷って、

「……こういうことできるだろ」
と万千湖の頭を撫でてきた。

 万千湖が笑うと駿佑が意外そうに訊いてきた。

「どうした? そんな嬉しそうな顔をして」

「いえ、課長に頭撫でられるの、なんか好きなんです」

「そんなものなのか?
 じゃあ、お前、俺の頭も撫でてみろ」

「えっ?」