OL 万千湖さんのささやかなる野望

 万千湖はメッセージをスクロールさせてみた。
 下からさかのぼって読む。

『できれば、回転してください』

『回転してなくていいか?』

『いいですな』

『寿司はどうだ?』

 万千湖の手が止まった。

『寿司はどうだ?』
『いいですな』!?

『いいですね』と打ったつもりだったのにっ。

 課長に『いいですな』はないだろう、と思ったが、今更、消せない。

 ぐはーっ、と万千湖はスマホを手に悶え苦しむ。

 よく突っ込まなかったな、課長。
 たぶん、突っ込むと返信が長くなるから突っ込まなかったんだろうな。

 大失敗だ~と倒れ込んでいた万千湖だったが。

 ムクリと起き上がり、ペンをとった。

『課長にお寿司屋さんに誘われました。

 課長への返信なのに「そうですな」と打ってしまいました。
 偉そうですみません』

 万千湖は、
「いや、日記じゃなくて、俺に謝れ~っ」
と駿佑に怒鳴られそうなことを黙々と書き綴った。