OL 万千湖さんのささやかなる野望





「なんか昨夜、恐ろしい歯医者の夢を見ました」

 駿佑が焼いてくれたトーストを齧りながら朝、万千湖は言った。

「……歯医者の夢?」

 万千湖が焼いてみた形のよくない目玉焼きを食べながら、駿佑が訊き返してくる。

「額に歯医者さんのあれをつけた課長の夢です。
 出張して、私のところまで、治療しに来てくれるんです」

「そうか……」

「おかしな映画見たからですかね?

 あっ、すみませんっ。
 面白かったです、映画っ」

 課長が選んだB級ホラーを面白くなかったとか言っちゃ申し訳ないな、と万千湖は謝ったが。

 何故か、駿佑の方が申し訳なさそうな顔をしていた。

 その日一日、駿佑はやさしかった。