OL 万千湖さんのささやかなる野望




 その日の夕食後、共有リビングで万千湖はぼんやりテレビを見ていた。

 駿佑は式の席順の紙を見て悩んでいるようだった。

 そんなに席順が難しくなるような招待客なのかな? と思っていたが。

 駿佑が悩んでいるのは別のことだった。

「課長」
と呼びかけると、駿佑が顔を上げる。

「課長もトゲトゲの指輪をはめてください」

 は? と言った駿佑が、

「何故、俺が指輪を……

 いや、結婚指輪ははめるつもりだが、トゲトゲはしてないぞ」
と言う。

 そうでしたね……と思う万千湖は昼間からずっと考えていた。

 首輪をはめないと、いつか課長が逃げてしまうのでは、と。

 首輪は無理だから、指輪。

 せめて首輪の代わりに指輪をして欲しい。

 トゲトゲの首輪の代わりに、トゲトゲの指輪を、と思って、そのまま言ってしまったのだ。