OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


「なんで、指輪断ったのよ。
 もらっときなさいよ~」

 昼休みが終わり、ロッカールームに向かうとき、瑠美がそう言ってきた。

「いや~、ありがたいんですけど。
 そんなにもらっちゃ申し訳ないですし。

 指輪あまりつけませんしね」

「もらっときなさいよ~。
 きっと指輪の数は、課長の不安の数よ」
と安江が笑い、瑠美も笑った。

「そうそう。
 その指輪、きっと首輪的なものよ。

 あんたが何処にも行かないように」

 そうですか。
 何処にも行かないように。

 いや、行く予定ないんですけどね。

 でも、そうして、相手に首輪をはめたい気持ちはわかります、と万千湖は思っていた。

 だって、私も課長が何処かに行ってしまったら、嫌だから――。

 万千湖はまた頭の中で、駿佑にトゲトゲの首輪をはめそうになる。