OL 万千湖さんのささやかなる野望

 考えすぎて、デートという文字がゲシュタルト崩壊を起こしそうになったとき、フロントガラスに、ぽつぽつと雨が落ちてきた。

 それはすぐ、サーッと降るに霧雨変わり、夜の街の灯りがけぶって綺麗だった。

 そんな雰囲気のある夜に電話をしているのに、この女は冷蔵庫の前にしゃがんで、半分凍ったケーキを食っている。

 溶けきらなかったのに、待ち切れなくて食べてしまったのだろう。

 なんだかおかしくなって、笑ってしまった。

 何処が可憐なんだ、と思いながら。

「わかった。
 じゃあ、いつにする?」

 万千湖の歌声の響き渡っただろう昼間の青空から一転、降り出した雨を見ながら、駿佑はそう訊いていた。