OL 万千湖さんのささやかなる野望

「もうすぐ、島谷さんが来るんだ。
 結婚してくれ」

 だから、島谷さん、誰なんですかっ!?

 お会いしたことないんですけどっ?

 何故、その人が我々の運命を握ってるんですかっ。

「……お前と見合いで出会って。
 部長の顔を立てるため、三回、デートして別れようと誓って。

 でも、鉄板焼きの店や、回転寿司や古書店に行きながら。

 どれもデートにカウントしたくないと思うようになっていた。

 たぶん、お前との関係を終わりにしたくなかったからだ。

 ……三回なんて、ほんとは、もうとうの昔に過ぎてるよな。

 俺にはもう、お前とデートする義務も権利もない。

 でも……、俺は今も、お前とデートしたいかなと思ってる」

 課長……。

「家に帰れば、お前はいるし。
 結婚したら、家族になるが。

 一緒に家を建てても。
 一緒に住んでも。

 結婚しても。
 年をとっても。

 俺はずっと、お前とデートしたいかなと思う。
 三回じゃ足りない」

 ……課長。
 我々、なんか途中、順番逆ですよね、と思いながらも、万千湖は駿佑に手を取られたまま、涙ぐんでいた。

 そして、周りもざわめいていた。

 瑠美が、あの課長がこんなことを言うなんてっ、という顔をする。

 安江が、あの課長がこんなとこを言うなんてっ、という顔をする。

 鈴加が、あの課長が……っ。

 ……待て、何故、全員聞いている、と思ったが、ロビーなので仕方がなかった。