OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


 節約すると言いながら、ランチに行ってしまうの何故なんだろうな。

 引っ越してから冷凍食品弁当もまだ作ってないし、と思いながら、瑠美たちとロビーまで戻ってきた万千湖はエレベーターのところで駿佑と出くわした。

 何故か、青ざめている雁夜と不安げな綿貫を連れている。

「あ、課長っ。
 お疲れ様ですっ」
と万千湖は苦笑いしながら挨拶した。

 また外に食べに行ってたのか、と言われそうな気がしたからだ。

「課長、さっき、中古車センターの前を通ったんですけど。
 六万円の車はなくなって、八万円のが入ってましたよ。
 六万円のよりは、ちょっと大丈夫な感じですかね?」

「……どの辺が大丈夫なんだ」
と呟いたあとで、駿佑が言う。

「白雪、その車は買うな。
 もうすぐ保険会社の島谷さんが来る」

「え? はい」

「白雪……

 ま」

 ま?

「……ま、

 結婚してくれ」
といきなり駿佑に手を握られた。

 『ま』が気になって、結婚してくれも、手を握られたことも頭に入ってきませんっ、と思いながらも、万千湖は訊き返す。

「……何故ですか?」

 結婚してくれに、何故ですか? はおかしいな、と思いながらも、言ってしまっていた。

 あまりにも唐突すぎたからだ。