OL 万千湖さんのささやかなる野望

「そ、そのままでいいのっ?

 ゆ、指輪とか……
 あっ、渡したかっ」

「思い出の場所とか、夜景の素敵なレストランとかでなくていいのか?
 プロポーズがしょぼいと一生言われるぞっ」
と心配してくれる二人をお供のように引き連れ、駿佑は万千湖を探して社内を歩く。

 そうだ、恐るな。
 失敗しても、フラれるだけだっ。

 ……フラれ……。

 駿佑の頭の中に、万千湖が去り、激突してくる鳥と狸とあの家に取り残される自分の幻が浮かんだ。

 足許には万千湖が残して行ったまつぼっくり。

 いや、狸がいるのはコンビニだったな……。

 ちょっと気持ちが()えそうになったが、保険の人はあと少しで来てしまう。

 どうも自分は恋愛に関しては、積極的でないようだ。

 今のこの勢いでどうにかすべきだ、と駿佑は思っていた。