OL 万千湖さんのささやかなる野望

 目が合うと、駿佑は言った。

「……美味いか?」

「は、はい……」

 なんでしょう、この緊迫感。

 美味いか?

 だが、少しは自分で作れよ? とか?

 怒ってますか?
 もしかして。

 私があまりにもなにもできないので……。

「あ、明日は私、お料理頑張りますねっ」

 そう前のめりに言ってみたが、
「……頑張らなくていい……」
と駿佑は前後に妙な間を持たせて言う。

 また沈黙した。

 なんなんだろうな? と思う万千湖は、駿佑が雁夜に、

「とりあえずさ。
 マチカとの距離を縮めるために、名前で呼んでみたらどうかな?」
と言われていたのを知らなかった。