OL 万千湖さんのささやかなる野望

「いえ、たまには私が課長を乗せていって差し上げたいので」
と万千湖が笑ったが、駿佑は素っ気なく言ってくる。

「余計なお世話だ。
 お前、別に運転得意じゃないんだろう」

 が、さっきより、雰囲気が柔らかくなった気がした。

「俺は別に運転は苦ではない。
 遠慮するな。

 それにお前、金ないだろう、今」

「大丈夫ですっ。
 六万くらいならなんとかなりますっ。

 まだ売ってますかね? あの六万円の車っ」
と笑顔で言って。

「……いや、ほんとうに遠慮するな。
 何日くらい走れるんだ? その車」
と言われてしまった。