OL 万千湖さんのささやかなる野望




 その頃、駿佑たちはロビーの自動販売機前にいた。

 珈琲が出来上がるまでの間、スマホをいじっている雁夜に、
「なにしてんだ?」
と駿佑は訊く。

 雁夜は笑顔で言ってきた。

「マチカのオフィシャルグッズを競り落としてるんだよ」

 今か……と思いながら、駿佑は飲みかけの珈琲を口にする。

「あーあ、引退前にもっと応援しておけばよかったな~。
 引退してから、こじらせちゃってるよ」

 そうぼやきながら雁夜は出来上がった珈琲を取ったあとで、

「駿佑と別れて再デビューしてくれないかな」
とぼそりと呟く。

 ……別れてって。
 そもそも付き合ってもないんだが、と思いながらも黙っていると、

「でも、変な感じじゃない?」
と雁夜が言ってくる。

「自分の彼女のオフィシャルグッズがあるとか」

 彼女ではないし、付き合ってもない。

 だが、今、あいつがフラッと向こうからやってきて、俺より雁夜の方に先に微笑みかけたり。

 薬指に俺のやった指輪をはめてなかったりしたら。

 ……ちょっと腹立てて、拉致監禁とかしたくなるな。