その少し前、廊下を歩いていた雁夜は万千湖が向こうからやってくるのに気がついた。
本当は角を曲がろうと思っていたのだが、直進してみる。
「お疲れ様、マチ……白雪さん」
そう挨拶しながら、万千湖の薬指にはまっている指輪を見ていた。
あーあ、いよいよなのかな、と思う。
まあ、他の人にとられるくらいなら、駿佑の方がいいし。
よく考えたら、好きだったアイドルが友だちの奥さんとかすごいじゃないか。
これからもみんなで一緒にカラオケに行ったりできそうだし、と雁夜は前向きに考えようとした。
だが、万千湖に、それは婚約指輪なのかと確認してみても、不思議な返事しか返ってこない。
「課長は首輪、つけないでしょうしね」
聞き違いかな? と雁夜は思った。



