OL 万千湖さんのささやかなる野望

 うまくいっていると思っていた、自分が世話しているカップルが、いきなり破局したら、部長は悲しんでしまわれないだろうか。

 いや、しかし、一生のことだしな。

 そもそも、課長は私と結婚する気などないだろうし。

 私も今は結婚とか考えられないな。

 もうしばらく、ゴロゴロしていたい。

 前の仕事を辞めるとき、
「お前も可愛いお嫁さんになりたいとか言うのか」
と言われたが。

「いえ。
 半年くらいゴロゴロして過ごしたいです」
と答えて、

「……そうか」
とちょっと呆れたように、でも、ちょっと納得したように言われた。

 そうっ。
 可愛いお嫁さんになるより、今はゴロゴロッ。

 そう思って、ちょっとゴロゴロし。

 それから働きはじめたが、今も家ではずっとゴロゴロしている。

 最高だ、ゴロゴロ! と思っている万千湖に駿佑が言う。

「ともかく、もうちょっと調子を合わせておいてくれ。
 部長の息子さん、結婚が決まったみたいで、もうすぐ忙しくなるそうだし」

 そっちが忙しくなったら、俺たちのことなど忘れるだろう、と言う。

「忙しいとこ、悪かったな」

「いえ、こちらこそ。
 すみません。

 では」
と万千湖はスマホを助手席に置き、発進した。