OL 万千湖さんのささやかなる野望

「もう三回課長と出かけたいですっ」

 呑みに、と万千湖は頭の中で思っていたが、酔っていたせいもあり、口からは出ていなかった。

「そ、そうか。
 わかった……」

「あっ、ここですっ。
 お世話になりましたっ」

 万千湖はマンションの前で、深々頭を下げたが、その瞬間、コンタクトがずれていた。

「いてっ」
「大丈夫か?」

「あ、大丈夫です。
 コンタクトがずれただけで」
と万千湖はその目を覆う。

「目が悪いのか」
「はい、ちょっとだけ」

 ちょっとだけ? と訊き返す駿佑に、ではでは、と言って万千湖は中に入っていった。

 エントランスホールから振り返ると、駿佑はまだ、こちらを見ていた。

 万千湖は手を振る。

 万千湖がエレベーターに乗るまで、駿佑は見送ってくれていたようだった。