OL 万千湖さんのささやかなる野望

 祈るように手を合わせ、万千湖は言う。

「頑張れば、いつか、お二人より上手くなれると信じています。

  Believe in yourself.
  自分を信じて、と日記帳も言っています」

「……誰が言ってるって?」

「私のあの日記帳です。
 日々、やり遂げたことを書いている」

「……お前が日々、なにをやり遂げているのか怖いんだが」
と呟く駿佑に、

「あの表紙にそう書いてありますよ」
と言うと、日記帳を見たことがある駿佑は、ああ、と言う。

「Diaryの文字の下に小さくな。
 デザインを配置よく整えるのに、ちょうどいい長さの文字を置いてみました、みたいな、あれな」

「……いや、そうかもしれないんですけど」

 いい言葉ではないですか、と万千湖は言った。

「そういえば、スケジュール帳の方なんですが。
 あれからデートのシールって、使ってないんですけど。

 課長と結構出かけてますけど。
 あれはデートではないんですかね?

 毎回思うんですよ。
 今日のこれはデートなのかなって」