OL 万千湖さんのささやかなる野望

 いやいやいや。
 待ってくれ。

 俺はまだ自分の気持ちについてゆっくり考えたいんだっ、と思ったとき、

「あの~」
と万千湖が遠慮がちに言ってきた。

「お二人ともあの家に住みたいのなら、私が遠慮しましょうか?」

「いや、なんでだっ」
「白雪さん、それだと意味がわからないんでっ」
と雁夜と同時に叫んでしまう。

 だが、そのとき、
「課長と課長が同じ家にっ。
 素敵ですっ」
といきなり叫んだ人物がいた。

 コップを手に廊下に立っていた安江だ。

 言っておいて、すみません……と笑ってごまかしながら去って行く。

 その後ろ姿を見送る万千湖が、
「安江さんって、実は()……

 いや、なんでもないです」
と呟いていた。

「ふ……?」
と訊き返してみたが、万千湖は答えなかった。