OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


 駿佑の家は楽しかったが、やはり緊張していたらしく、駿佑の車に乗った万千湖は、ちょっとホッとしていた。

 緊張するはずの課長の車でホッとするとは……と思ったとき、駿佑が言った。

「よく頑張ったな。
 焼肉でも食べに行くか」

「あっ、いいですね~。
 ところで、さっきのいい日の話はなんだったんですか?」
と訊くと、駿佑は口ごもる。

「家を建てる日ですか?
 あ、入居日とか。
 それとも、棟上(むねあ)げの日ですか?」

 駿佑はかなり迷ったあとで言ってきた。

「……お前はたぶん、俺の嫁として狙われている」

「は?」

「ちょうどよさそうな嫁として狙われている」

「……本人が狙っていないのにですか?」

 課長には、まったく狙われている感じがないんですけど、と思いながら、万千湖はそう訊いてみた。

「そもそも、見合いして、一緒に家を建てるとか言うから。
 結婚すると思われているようなんだが……」

「……そういや、普通はそう思うかもですね」

 うちの親もそう疑ってましたしね。

「だが、さっきの親の態度を見ていたら、俺が違うと言ったところで、お前はうちの親に狙われそうな気がした」
と駿佑は言う。