OL 万千湖さんのささやかなる野望

「みんなに歌を聴かせてもらったのに、自分だけ歌わないのもな」

 曲がなかったら、アカペラでいいかと訊いてくる。

「待って、探そう」
と雁夜がスマホを手に言う。

 駿佑と雁夜はスマホを見ながら、話していた。

「ああ、あった。
 あるんだね、こういうのも」
と雁夜が言い、

 画面に『ベートーヴェン交響曲第9番第4楽章 歓喜の歌』の文字が現れる。

「何故……」
と呟く万千湖に、

「昔、声楽をやっている友人にマンツーマンで習った」
と駿佑が言う。

「社会に出たら、一発芸を要求されるときもあるだろうと思って」

 あなたの思い描く社会とはどんなのですか。