OL 万千湖さんのささやかなる野望




「カラオケ、久しぶりだわ~」

 新しく綺麗なカラオケルームに瑠美のテンションが上がっている。

「ここ、食べ物もおいしそうですね」

 万千湖がピカピカのメニュー表を見ながら浮かれていると、瑠美が、
「あんた、食べてばっかりいそうね。
 景気づけにまず歌いなさいよ、アイドル」
と言ってくる。

 ……この人もだ、と万千湖は思った。

 何故、この会社の人たちはみな、アイドルという言葉を(さげす)みに使ってくるのだろうか。

「え? アイドルってなに?」
となにも知らなかった綿貫が訊いてくる。

「万千湖、生意気にもアイドルやってたんですよ」

 別に綿貫にはバラしていいかと思い、そう瑠美にも言ってあった。

「ご、ご当地アイドルですよ」

 ええーっ、すごいじゃないーっ、と綿貫は叫ぶ。

「どうりで可愛いと思ったっ」

 いや、どっちかって言うと、うちはキャラが強いとか、癖があるとか。

 そういうので押してた気が……と思う万千湖の横で、雁夜が、

「『涙のショコラティエ』でいいかな?」
とスマホを手に笑顔で言ってくる。

 雁夜はスマホにカラオケ用アプリを入れてるようで、スマホから直接、選曲できるようだった。

 横から駿佑が覗き込み、
「本当にあるのかっ、カラオケに白雪の曲がっ」
と叫ぶ。

 私の曲っていうか、「太陽と海」の曲ですけどね。