OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


「あ~、こうして中に入ると、外って寒かったんですね~っ」

 会社のロビーに入った万千湖はハエのように手をこすり合わせる。

 急に身体が温まり、指先にビリビリと血が流れるのを感じて初めて、外がビックリするくらい寒かったことに気がついた。

 いや、寒いなと思ってはいたのだが、何故かそれほど気にならなかったのだ。

「あ、おかえりー。
 何処行ってたの?」

 ロビーの自動販売機の前にいた雁夜が二人に気づいて手を振ってくる。

 瑠美も側にいた。

 外で弁当を食べていたと万千湖が言うと、瑠美が驚く。

「ええっ? この寒いのにっ?
 物好きねえ」

 黒岩と出会った話もすると、雁夜が、
「ああ、プロデューサーの黒岩さん」
と笑い、駿佑が、

「……お前、詳しいな」
と呟いていた。

「黒岩さんが来てたんだ~」

 そう言う瑠美の目には、お会いしたかったっ、と書かれていたが。
 横に雁夜がいるせいか、口に出して言うことはなかった。