OL 万千湖さんのささやかなる野望

 弁当はマチカが作ったようだな、と気づいた黒岩は、はっ、と慌てる。

 マチカにはお茶の淹れ方は教えたが、弁当の作り方は教えていないっ。

 心配のあまり、じわじわ前に出てしまっていたらしい。

 そのうち、二人に、うわっ、と驚かれてしまった。

「あっ、く、黒岩さんっ」
と万千湖が立ち上がる。

 黒岩さん? この人がか、と男が言った。

 自分のことを知っているらしい。

 万千湖が遅れて立ち上がったその男に自分を紹介する。

「課長、太陽と海の元プロデューサー、黒岩さんです。
 黒岩さん、……えーと。
 私と見合いしてくださった小鳥遊課長です」

 そう言いながら、万千湖は照れた。

 黒岩は、突然、娘に、
「お父さん、私、この人と結婚するの」
と言われた父親のように戸惑い、

「ああ……例の詐欺師の」
と心の中で思ったままをしゃべってしまった。