OL 万千湖さんのささやかなる野望

 いい先輩のようだな、マチカ。

と黒岩は、今度は万千湖と鈴加が、ええっ!? と叫び出しそうなことを思う。

 いや、二人とも瑠美のことは好きなのだが。

 本人たちに訊いたらおそらく、
「面白い人だけど。
 いつも激しく振り回されてるから、いい先輩かと問われると、ちょっと~」
と苦笑いして言うことだろう。

 黒岩は思い出していた。

 喧嘩して前の事務所を飛び出し、実家に帰ったときのことを。

 家業は弟継いでいるし、どうしようかなと思いながら、日々、暇をもてあまし。

 なんとなく入った甘味処で、商店街の八郎に声をかけられた。

兼人(かねと)くん、芸能人やってたんだよね」

「マネージャーですが……」

「実は今度、商店街でアイドル作ろうと思うんだよ」

「……アイドル?」

 そうそう、と八郎といっしょに甘味処の店主が笑う。

「そのしるこ、おごるからさ。
 ちょっと手伝ってよ」

「……はあ」

 商店街の人たちには世話になっているし、どうせ暇だし、としるこ一杯で、『太陽と海』のプロデューサーになった。

 大変だったが、今となってはすべてがいい思い出だ。